論文詳細

50 Hzの電界は拘束されたマウスのストレスを軽減する

株式会社白寿生科学研究所研究開発部の堀研究員・原川研究員と帯広畜産大学生命平衡科学講座のグループは、拘束ストレスによって血中で上昇するグルココルチコイド濃度を電界(50Hz)が抑制することを発見しました。また、時間経過に伴う変化を観察することによって、拘束によるグルココルチコイドの濃度変化が最大となる値を抑制していること、ならびに、同作用が電界を形成するための電極と生体との位置関係によって影響を受けること明らかにしました。

 

背景

電磁界の生体への作用は、健康障害を引き起こすリスクについて多くの研究が行われてきましたが、一般的には、物理的性質として細胞膜を貫通する磁界と比較すると細胞膜が絶縁物となる電界の生体作用は磁界ほど深刻では無いと考えられ、詳細な検討が進んでいませんでしたが、一方では健康維持や疾病の治療へ応用されています。今回の成績は、生体反応の時間経過に伴う変化に対する電界の作用を示したことにより、50Hzの電界が生体作用を引き起こす確かさとともに、生体反応に対する電界の作用を示す方法論を提供することになります。

 

発表のポイント

1.商用周波数帯域(50Hz)の電界が閉所に閉じ込められたマウスのストレス応答に関連したホルモン、グルココルチコイドの血中濃度の上昇に対し抑制的に働くことを認めました。

2.電界自体がストレスとなる現象は認められませんでした。

3.拘束時に生ずるストレスホルモン濃度変化に対する電界の抑制的な作用がラットだけでなくマウスにも現れることがわかりました(参考文献1)。

4.ストレスホルモン濃度が拘束後に増加していく初期段階から収束段階に至る全過程で電界が抑制的に作用する様子を捉えました。

5.電極の位置を変えると、電界の作用が影響を受けることがわかりました。

6.商用数帯域の電界のストレス軽減作用が電界強度に関して用量依存性を示すことを示した我々の過去の研究成果に加え、電界の生体への作用の体系的整理が進展しました(参考文献2)。

7.電界の生体への作用が大きくは無いことが主たる原因となり、解析的な研究が進んでこなかった当分野において、再現性高く電界作用が認められる本実験系を用いることで電界の生体作用の整理が進むと期待されます。

 

 

原論文情報

雑誌名:Bioelectromagnetics

論文1: Hori T, Inoue N, Suzuki H, Harakawa S. 2017. Configuration-dependent variability of the effect of an electric field on the plasma glucocorticoid level in immobilized mice. Bioelectromagnetics 38:265-271.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28236325/

論文2: Harakawa S, Hori T, Inoue N, Suzuki H. 2017. Time-dependent changes in the suppressive effect of electric field exposure on immobilization-induced plasma glucocorticoid increase in mice. Bioelectromagnetics 38:272-279.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28130781/

 

参考文献

1: Harakawa S, Takahashi I, Doge F, Martin DE. 2004. Effect of a 50 Hz electric field on plasma ACTH, glucose, lactate, and pyruvate levels in stressed rats. Bioelectromagnetics 25:346-351.

2: Hori T, Inoue N, Suzuki H, Harakawa S. 2015. Exposure to 50 Hz electric fields reduces stress-induced glucocorticoid levels in BALB/c mice in a kV/m- and duration-dependent manner. Bioelectromagnetics 36:302-308.