論文詳細
光受容タンパク質の一種クリプトクロムが電界の受容体としても機能することを発見
公益財団法人国際科学振興財団(FAIS) 時間生物学研究所と、白寿との共同研究の成果の一部をまとめた論文が、国際誌Scientific Reportsに掲載されました(2021年10月15日付)。
タイトル:Effects of an electric field on sleep quality and life span mediated by ultraviolet (UV) A/blue light photoreceptor CRYPTOCHROME in Drosophila
(ショウジョウバエの紫外線(UV)-A/青色光受容体クリプトクロムを介した睡眠の質と寿命に対する電界の効果)
概要
キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)は、重要な遺伝子の80%程度がヒトと共通しており、モデル生物として広く利用されています。本研究では、キイロショウジョウバエを用いて、電界の生体作用メカニズムを検討しました。野生型の系統であるOregon R では、50 Hz, 35 kV/mの電界処置下にて、飢餓条件と低栄養条件での寿命延長が認められました。また、日中12時間の電界処置後に、翌日夜間の睡眠増加が観察されました。更に、生体内の代謝産物を網羅的に測定する、メタボローム解析の結果、飢餓条件で48時間の電界処置後に、体内のATP量が増加していました。一方、紫外/青色光の受容体として知られるタンパク質の一種、クリプトクロム(CRY)の変異体系統では、寿命や睡眠等の変化が観察されませんでした。ここで、CRYの発現を回復した系統では、電界の効果が復活しました。よって、クリプトクロムが電界の受容体として機能することが示唆されました。本研究の結果は、電界の作用メカニズムの一端を知る上で、有意義と思われます。