おしらせ詳細
電界処置が「ゴーシェ病」モデル動物の睡眠促進・寿命延伸に効果
当社が公益財団法人国際科学振興財団 時間生物学研究所(茨城県つくば市、所長 石田直理雄)と提携した研究を実施し、『ゴーシェ病モデルショウジョウバエにおける電界で誘導された睡眠促進と寿命延伸』が、学術雑誌「Biochemistry and Biophysics Reports」第41号(2025年1月)に掲載されましたのでお知らせいたします。
本研究では、指定難病「ゴーシェ病」に対する電界治療の可能性を検討するため、「ゴーシェ病モデルショウジョウバエ」に超低周波電界を処置し、効果を確認しました。その結果、電界処置がゴーシェ病モデルショウジョウバエの睡眠促進・寿命延伸といった生理的効果をもたらす可能性があることが示唆されました。さらに、細胞のストレス応答や老廃物処理に関わるp62およびPERKの発現増加が確認されました。
ゴーシェ病の原因遺伝子の変異は、パーキンソン病などの神経変性疾患との関連性が指摘されています。電界処置には、異常タンパク質の凝集を防ぐ効果があるとの報告もあり、もしこの作用が生体内でも再現されれば、ゴーシェ病の症状を緩和できる可能性があります。今後、ショウジョウバエモデルを用いた、ゴーシェ病やパーキンソン病に対するさらなる研究が期待されます。
株式会社白寿生科学研究所は、電位治療器のリーディングカンパニーとして、超低周波電界が持つ生体への作用に関する研究を着実に進めてまいります。
■「ゴーシェ病」とは
糖脂質グルコセレブロシドの代謝酵素グルコセレブロシダーゼ(GBA1)遺伝子の変異が原因となって発症する遺伝性疾患です。本来、過剰なグルコセレブロシドは、細胞内のライソゾームでGBA1によってセラミドとグルコースへ分解され、細胞外に排出されます。しかし、GBA1の設計図であるGBA1遺伝子に変異が生じると、GBA1の働きが悪くなり、グルコセレブロシドが分解されずに細胞内に蓄積し、臓器腫大、血液学的異常、成長障害といった全身症状や、骨症状、神経症状を引き起こします。ゴーシェ病の病型は、I型(慢性非神経型)、II型(急性神経型)、III型(亜急性神経型)に分類され、なかでもII型は予後不良で、乳児期に発症すると数年以内に死亡するケースも多くあります。日本国内での患者数は150名程度の希少疾患で、残念ながら完治させる治療法は確立されていません。治療法としては、酵素補充療法や基質合成抑制療法がありますが、中枢神経系への効果はないとされており、病型によっては治療選択肢が限られています。
■公益財団法人国際科学振興財団 時間生物学研究所について
私たちの体には約24時間のリズムで動いている体内時計がすべての細胞に備わっており、その時計が睡眠と覚醒のリズムを地球の自転に伴う24時間周期に同調させて、日常生活を送っています。しかし、体内時計リズムが自転周期にうまく同調しなくなると、脳ばかりかあらゆる末梢組織に障害が出現してきます。時間生物学とは体内時計機構を遺伝子レベルで解明し社会に応用する学問です。体内時計遺伝子の発見とその分子機構の解明に2017年のノーベル生理・医学賞が贈られたのはご存じの方も多いと思いますが、我々はこの機構が睡眠や認知症に関わることを見出し現在研究しています。この分子機構の大筋はショウジョウバエをモデル動物として発展してきました。国立研究開発法人産業技術総合研究所で上席研究員を務めた石田直理雄が2016年に時間生物学研究所を国際科学振興財団(つくば市春日)の中に立ち上げました。
■発表雑誌
雑誌名:Biochemistry and Biophysics Reports
論文名:Electric-field induced sleep promotion and lifespan extension in
Gaucher’s disease model flies
著者:Nedachi, T., Kawasaki, H., Inoue, E., Suzuki, T., Nakagawa-Yagi, Y., & Ishida, N.
掲載日:2025年1月
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2405580825000020
DOI:101915
■プレスリリース
PP times(2025年5月4日付)
希少疾患ゴーシェ病モデル動物に電界処置が効果
-ゴーシェ病モデルショウジョウバエの睡眠促進・寿命延伸を確認-
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000016.000078951.html