論文詳細

電界による生物学的作用の呼気ガス分析を用いた評価

白寿生科学研究所、慶應義塾大学医学部漢方医学センター、帯広畜産大学生命平衡科学講座(白寿)による共同研究の成果の一部をまとめた「電界による生物学的作用の呼気ガス分析を用いた評価」と題した論文が、過日、電気学会論文誌Cに掲載されました(2024年5月6日付)。

 

 

私たちは、これまでのマウスを用いた研究で、ストレスやストレスが原因となる炎症・組織損傷に対する電界の抑制的な効果を発見しました。これらを発展させる目的で、本研究では、電界が生物に及ぼす効果を、糖代謝や脂質代謝、呼吸商、エネルギー代謝を含む代謝プロセスの観点から検討しました。

 

代謝プロセスは、呼気中の酸素、二酸化炭素、窒素の成分比率から推測できます。本研究では、マウスの呼吸を逐次測定装置に送り呼気中のガス濃度変化を捕捉可能な装置を用い代謝プロセスを評価しました。

 

マウスは夜行性で、明るいと動かず、暗くなると活動的になります。外部環境の明るさを調整しながら呼気ガス分析を行った結果、活動的な時間帯(暗期)では糖代謝が上がり、脂質代謝が下がる、逆に動かない時間帯(明期)ではその逆の現象が観察されました。また、この変化は日内変動として捉えることができました。

観察期間の8日目に、マウスに閉所ストレスを与え、同時に電界(50 Hz、10kV/m)を処置しました。この前後の代謝プロセスの数字の変化をベースとすると、ストレスおよび電界が及ぼす影響または効果を捉えられる仕掛けです。

 

ストレスのみを与えたマウスと、ストレスと電界処置を同時に行ったマウスで比較したところ、糖代謝、脂質代謝、呼吸商、エネルギー代謝に差を認めました。例えば、活動期の呼吸商はストレス後に低下しましたが、電界処置群ではこの低下が顕著でした。また、非活動期の脂質代謝はストレス後に増加しましたが、電界処置群ではやや抑制されました。ストレス時の糖代謝やエネルギー代謝に抑制的な効果などから、電界の代謝プロセスへの作用が示されたと言えます。過去の研究成果ともあわせ、これらの結果は電界の医療応用を検討する際に有用な情報となるでしょう。

 

 

論文情報
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejeiss/144/5/144_526/_article/-char/ja/